2016年7月6日水曜日

糖尿病治療の目的を考えてみる

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑤ 糖尿病治療の目的を考えてみる


 今月の米国心臓病協会学術集会(AHA2015)にて、世界の高血圧診療ガイドラインを一変させる臨床研究の成果(SPRINT試験)が発表されました。収縮期血圧120㎜Hg未満を目指した厳格降圧群が、140㎜Hgを目指した標準降圧群に比べて、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)を25%もリスクを減らしたというものです。75歳以上でも同様の傾向を認め、日本でも週刊誌等で大きな反響を呼びました。当院でも患者さんから「もっと120㎜Hg未満まで血圧を下げた方がいいですか」とよく相談を受けます。しかし答えは「今の段階では必要ありません」です。実はこの臨床試験、最初から糖尿病患者が除外され検討されています。従って、この結果のみで糖尿病患者さんの治療選択は出来ないのです。糖尿病治療学が究極のテーラード治療と言われる所以です。糖尿病の臨床では、多くの臨床試験やガイドラインと通して最良の治療選択を患者さんに提供することが要求されます。統計学的に妥当性のある選択肢を外来で即座に提供することはなかなか骨が折れる作業です。今日も秋の夜長に論文と格闘しないといけない予感がしてきました。次回のテーマも糖尿病治療の目的についてのお話しです。