私は、これまで糖尿病内科専門医として研鑚し多くの臨床経験を積んでまいりました。

私自身の専門を活かし糖尿病を中心に生活習慣病をはじめとする内科疾患についての情報を少しでも皆様の生活に役立ててもらえればと考えております。

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2019年8月29日木曜日

高齢者糖尿病診療ガイドライン

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑬ 高齢者糖尿病診療ガイドライン


 2017年6月に日本老年医学会と日本糖尿病学会が合同で作成した「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」刊行されました。

ガイドラインとは病気になった人に対する治療の実績や,学会での研究をふまえて作られた診療の目安、治療指針のようなものです。

今回の高齢者糖尿病ガイドラインでは、患者の年齢、認知機能の程度、ADL(日常生活動作)の程度に基づいて詳細な管理目標が設定されています。
糖尿病の治療は100人患者さんがいれば、100人とも違う治療法でなければいけません。

今回しっかりしたガイドラインが示され、高齢糖尿病患者においては、拡がりのある選択肢を多く得ることが出来ました。
糖尿病テーラード治療時代の幕開けを感じさせます。

2017年11月9日木曜日

ヒポクラテスの誓い

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑫ ヒポクラテスの誓い


「師の子孫を自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える。」職業倫理について書かれた宣誓文で、世界中の西洋医学教育において長く教えられてきているヒポクラテスの誓いの一節です。

先日、南大阪病院の川口祐司先生をお招きして近隣の糖尿病クリニック、尼崎総合医療センター、関西労災病院、県立西宮病院の糖尿病専門医の先生方とインスリン治療の研究会を開催しました。
講演50分にディスカッション時間70分という熱い研究会でした。

南阪神県域の糖尿病治療のレベルの高さを実感するとともに、情熱的な先生方と深い議論が出来た事が印象的でした。
医療技術はこうした先輩、後輩を交えた専門医達の純 粋でフラットな交流により引き続かれていきます。
日本の医療教育もまだまだ捨てたものではありません。

地域の患者様に高い医療で還元できるよう頑張っていきたいと思います。

2017年10月19日木曜日

GM(フラッシュグルコースモニタリングシステム)について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑪ GM(フラッシュグルコースモニタリングシステム)について


 Freestyle Libre®が日本で保険適応になりました。

これはFGM(フラッシュグルコースモニタリングシステム)と言われるもので、上腕の後部につけたセンサーに、服の上から血糖測定器をかざすだけで、瞬時に血糖値を測定できるものです。

 指先に針を穿刺することにより採血していた従来の方法と比べると革新的な方法であると言えます。1日に何度でも気軽に測定できるため、痛みや煩雑さから血糖測定を躊躇っていた患者さんからは概ね好意的に迎えられています。

革新的な技術は多くの患者さんの人生を実り多いものにします。これからも多くの新薬やデバイスが発売されていく予定です。

本当にいい時代になったと思います。

2016年10月12日水曜日

糖尿病治療における食事療法について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑩ 糖尿病治療における食事療法について


 糖尿病患者さんにおいて食事療法は、最初に学ぶべき基本の治療法です。従来の糖尿病食事療法はカロリー制限が中心です。

糖尿病患者さんが医療者から推奨される摂取カロリー量は、厚生労働省の決める日本人の栄養所要量に比べてかなり少なくなっています。このため食事療法の継続は困難になっているのが現状と言えます。治療の継続のためには、色んな工夫が必要になります。

前回紹介した糖質制限食も林医院の取り組みの一つです。
糖質制限食の他に当院では治療継続のために実際の糖尿病食レシピ集を用意しています。

次回のコラムからは独自の糖尿病食事レシピを紹介していきたいと思います。

2016年8月31日水曜日

糖尿病治療における糖質制限食について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑨ 糖尿病治療における糖質制限食について


 最近、極端な糖質制限食が流行っています。確かに必要以上に糖質を制限すると、糖尿病は短期間で治りますが、体の負担が強く、一部の方では心臓病を悪化させてしまうこともあります。

このため安全に糖質を制限する場合1日150g前後の糖質は摂取する事が必要だとされています。実際日常の食卓で気をつけないといけない糖質は“白いご飯”です。1食の中ではご飯の糖質量が一番多く、重量の4割が糖質量にあたります。めん類は茹でて水を切った状態の重量の20%が糖質量です。おかずは量や質になく糖質量は約20gとされています。


2型糖尿病の患者さまはこのように簡便な方法で摂取する糖質を把握され、ご自身にあった食事療法を選択していくことになります。この方法を「カーボカウント」と我々は呼んでいます。適切な糖質量を簡便にコントロールする方法の取得が糖質制限にとって必要と言えます。

2016年8月17日水曜日

糖尿病患者における糖質制限食について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑧ 糖尿病患者における糖質制限食について


 ちょうど10年前ぐらいにアトキンスダイエットというダイエット法が流行っていました。最初の2週間は炭水化物の摂取量を1日20グラム以下にするという凄まじいダイエット法です。糖尿病患者においても体重減少効果に優れ、病気が治っていく過程を目撃して感心したことを覚えています。しかしその後の経過では、ほとんどの患者さまは長続きせず、リバウンドを繰り返すようになりました。また過剰に糖質制限すると、動物性蛋白の摂取が増えてしまうため、動脈硬化性疾患による死亡率が増加してしまう事もその後報告されています。

アトキンスダイエットはさておき、最近の緩やかな糖質制限食は改良が進み、優れた治療法として認知されるようになってきました。しかし扱い方では「諸刃の剣」にもなります。管理栄養士の元、厳格に進めていく必要がありそうです。


次回のブログでは、実際のクリニックでの指導方法について詳しく解説していこうと考えています。

2016年8月3日水曜日

運動、食事療法の効果について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑦ 運動、食事療法の効果について


 経済アナリスト森永卓郎氏の某CMへの出演が、大きな話題を呼んでいます。約4か月の糖質を制限した食事改善とジムでのトレーニングの結果、2か月半で体重を約20キロ減らすことに成功したそうです。内臓脂肪が減ったことで糖尿病が改善し、これまで月8000円かかっていた注射代や薬代がいらなくなり、結果的には大きな節約につながったとのこと。

厳格な食事療法や運動療法に対する危険性への議論は置いておくとして、大変すばらしいことだと思います。薬物療法により血糖を下げることも大事ですが、糖尿病の治療の基本は生活習慣の改善が大切です。しっかり約束事を守れば、食事療法や運動療法によりインスリンや血糖降下薬から離脱できることも少なくはありません。


次回は、糖質制限など話題の食事療法についてふれていきたいと思います。

2016年7月20日水曜日

糖尿病治療の妙

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シリーズ⑥ 糖尿病治療の妙


 昨年10月に、糖尿病標準治療に新薬であるSGLT2阻害薬のエンパグリフロジンを上乗せすることで、2型糖尿病患者の心血管イベントのリスクが有意に低下したとするEMPA-REGOUTCOME試験の結果が第51回欧州糖尿病学会で報告されました。全死亡リスクを32%、心血管死リスクを38%低下させることなども示され大変話題になりました。では私たち専門医は、明日からこの薬ばかりを使うかというと当然そうではありません。論文におけるサブグループで解析をしたところ、年齢では高齢者(65歳以上)で有益性が高く、BMI30未満の群で有益性が高かったことがわかっています。つまり従来この薬の適応であったはずの若年肥満層にはあまり効果がなかったことも考慮しないといけません。この試験の患者層は血管イベントの既往のある2型糖尿病という、日本の日常診療では稀な患者様である点も注意が必要です。糖尿病治療は一筋縄ではいきません。複雑なパズルをひも解いて選択薬を決定していく点に糖尿病臨床の妙があります。

2016年7月6日水曜日

糖尿病治療の目的を考えてみる

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ⑤ 糖尿病治療の目的を考えてみる


 今月の米国心臓病協会学術集会(AHA2015)にて、世界の高血圧診療ガイドラインを一変させる臨床研究の成果(SPRINT試験)が発表されました。収縮期血圧120㎜Hg未満を目指した厳格降圧群が、140㎜Hgを目指した標準降圧群に比べて、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)を25%もリスクを減らしたというものです。75歳以上でも同様の傾向を認め、日本でも週刊誌等で大きな反響を呼びました。当院でも患者さんから「もっと120㎜Hg未満まで血圧を下げた方がいいですか」とよく相談を受けます。しかし答えは「今の段階では必要ありません」です。実はこの臨床試験、最初から糖尿病患者が除外され検討されています。従って、この結果のみで糖尿病患者さんの治療選択は出来ないのです。糖尿病治療学が究極のテーラード治療と言われる所以です。糖尿病の臨床では、多くの臨床試験やガイドラインと通して最良の治療選択を患者さんに提供することが要求されます。統計学的に妥当性のある選択肢を外来で即座に提供することはなかなか骨が折れる作業です。今日も秋の夜長に論文と格闘しないといけない予感がしてきました。次回のテーマも糖尿病治療の目的についてのお話しです。

2016年6月22日水曜日

糖尿病治療の目的を考えてみる

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ④ 糖尿病治療の目的を考えてみる


 今回からは糖尿病の治療目的についてお話しします。以前ケンブリッジ大学の学生が我家にホームステイしていました。彼女曰く“日本人はとにかくルールを守ろうとするのでとても尊敬もするが、少し行き過ぎていると感じる時もある”。

確かに日本人は、糖尿病治療の世界でも医者から患者まで、とにかくルールを大切にします。“カロリーは1日○○kcalにしなさい”、“食後血糖は○○までにおさめなさい”のように細かく、画一的な指導する傾向があります。それはそれで正しいのですが、何か違和感を感じる方も多いのではないでしょうか。

糖尿病の治療目的は,健康人と同様な日常生活の質(QOL)を保ち、健康人と変わらない寿命を全うすることにあります。つまり毎日を元気に過ごすことが目的です。沢山のお薬を飲んで血糖や血圧、コレステロール値を限りなく正常化することが必ず健康につながるとは限りません。

今回のテーマでは、多くのの臨床データに基づいて、統計学的に妥当性のある最新最良の医学知見を用いる医療(evidencebasedmedicine)の観点から、糖尿病治療の目的を再考していきたいと思います。

2016年6月8日水曜日

最新のインスリン療法について

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ③ 最新のインスリン療法について

糖尿病テラード治療の幕開けについて前項でお話し致しました。 インスリン治療も最近は多様化しています。ここでは、簡単なイン スリンの最新治療についてご紹介します。

① SAP療法:Sensor Augmented Pump パーソナルCGM機能を搭載したインスリンポンプです。血糖をリアルタイムに モニターしながらインスリンポンプで自動的にインスリンを注射します。自己負 担額が高額になるため、1型糖尿病の患者さんなどに適応は限られてきます。

② BOT療法: Basal Supported Oral Therapy 経口薬を服用しながら基礎インスリンを追加する方法です。インスリンの回数が 1回で済み、安定した血糖コントロールが得られます。最近の主流になっています。

③ BGT療法:Basal supported GLP-1 Therapy 今年海外のガイドラインに登場した新しい治療法です。インスリンと GLP-1受容体作動薬を朝に1回ずつ注射します。効果のある方ではインスリ ンの頻回注射から離脱できます。低血糖回数が減りすぐれた治療法です が、効果がでない患者さんもいます。導入には注意が必要です。

④ 強化インスリン療法 古典的な治療法ですが、非常にシンプルで優れた治療法です。カーボカ ウント法やスライディングスケール法といったインスリン治療スキルを併用 して低血糖などおこさないようにコントロールすることが重要です。

他にも沢山の治療方法があり、個人の生活スタイルにあったイ ンスリン治療を選択できる時代になりました。限られた選択肢で 病気と戦っていた昔を思うと、隔世の念があります。




2016年5月25日水曜日

多様化するインスリン療法

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ② 多様化するインスリン療法


 15年前は糖尿病でインスリン注射をしている人は内服薬と併用をすることができませんでした。
このため多くの重症の患者様は13回以上インスリン注射をする“強化インスリン療法”をされていました。

この方法では低血糖のリスクや、体重増加を避けるためのインスリン用量調節が難しく、期待した血糖コントロールを得る事が困難でした。

10年前より内服薬とインスリン注射の併用療法が可能となり、随分とインスリン患者が過ごしやすい時代になってきています。
最近ではGLP-1受容体作動薬といった新しい注射製剤が発売され、インスリン注射の併用が注目されはじめています。
朝の注射だけで、内服もなく重症患者がコントロール出来ることもあります。 

インスリン注射の選択肢が増え、まさにテーラード治療の幕開けです。 

次回からは様々な最新のインスリ治療法をご紹介していきたいと思います。

2016年5月11日水曜日

糖尿病治療の進歩

糖尿病・生活習慣病のおはなし

シリーズ① 糖尿病治療の進歩


 今回から糖尿病や生活習慣病に関わる話題をシリーズで提供していきたいと思っています。
第一回目は“糖尿病治療の進歩”についてです。

 先月パーソナルCGM機能搭載インスリンポンプが日本で初めて発売されました。
血糖変動を随時リアルタイムにモニターで確認しながらインスリン注射ができる最新のインスリンポンプ機器です。
主に1型の糖尿病患者様が導入の対象になります。

 当院でも導入していますが、血糖コントロールが逆にうまくいかない人も出てきています。
いつでも血糖を観察出来るようになると、血糖値ばかりが気になってしまい、過剰な捕食やインスリン注射に走ってしまったのが原因です。

 糖尿病治療は千差万別です。
最新の治療法でも、すべての人がうまくいくとはいなかなか限りません。
このため、一人一人に治療方法を合わせるテーラード治療が必要になってきます。

 今後このブログでは、千差万別の最新のテーラード治療法を皆様にご紹介していきたいと考えています。
どうぞ宜しくお願いします。